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本文

The United States Congress declared the 1990s the Decade of the Brain, but some suggest that the twenty-first century will be the century of the brain, when the last great frontier in biology an understanding of the most complex biological system, the human brain will be conquered.  Already the considerable advances made in brain science over the past 50-100 years are being called upon to explain many things about human behavior.  Universities are asking what various disciplines and fields can learn from brain science and vice versa.  Fields as diverse as philosophy, music, English, linguistics and anthropology are represented, as well as the expected fields of biology, psychology, and computer science.

Many examples can be offered to illustrate the impact of brain science on other disciplines; I offer two here.  First, studies of how we learn and remember things have demonstrated convincingly that memories are largely reconstructive and creative.  False memories are not uncommon.  These findings have fundamentally changed the way the law views eyewitness testimony.  Contrary to the long-held belief that an eyewitness can faithfully record and remember an event, we now realize that what we remember of an event depends on many factors previous experiences, biases, attention, imagination, and so forth.  Different eyewitnesses can give very different reports, though in each case describing what each observer firmly believes he or she saw.

A second example is the placebo effect long thought to be without physiological basis.  If a sugar pill is administered to someone experiencing pain, that person reports a lessening of the pain if told the placebo will help.  We now know that the pain reduction is caused by the release of special chemicals in the brain.  No drug trial today is carried out without a control group receiving a similar, but presumably inactive, agent.  But placebo effects can greatly influence the outcome of such trials.  How then do we decide what works and what doesn’t?  This question has enormous implications for medical therapies.

How far does the influence of brain science extend?  Do studies on the developing brain, for example, tell us much about how we should raise or educate our children?  Some say yes, but others respond with a strong no.  The stakes are high public programs costing millions, if not billions, of dollars, are linked to notions supposedly neurobiologically based, but often the neurobiological evidence cited in support of one position or another is weak, controversial, or interpreted too strongly.  The view that the young brain is more modifiable than the adult brain which is certainly true led to the notion that the first three years are the essential ones for raising a healthy, happy, and competent child.  This extreme view, and the evidence on which it is based, has recently been critically examined in John Bruer’s book, The Myth of the First Three Years.  As Bruer clearly documents, the first three years are important for brain development, but so are subsequent years.  Nothing closes down completely after just three years indeed, the brain continues to mature until the ages of 18-20.〔明治学院大・508語〕

 

 

和訳

1 アメリカ議会は1990年代を「脳の10年」と宣言したが,21世紀が脳の世紀となり,生物体の最も複雑な組織[最も複雑な生物系組織]である,人間の脳を理解するという生物学の最後の大きな未開拓の領域が征服されるだろうと示唆する人もいる.ここ50年から100年にわたってすでになされた,脳科学における少なからぬ進歩が,人間の行動について多くの事柄を説明するのに活用されている〔→すでにここ50年から100年にわたる脳科学のかなりの進歩を活用して,人間の行動について多くの事柄が解明されつつある〕.大学では,さまざまな学問や分野が脳科学から何を学べるかが問われているが,逆もまた同様である.生物学,心理学,コンピュータ・サイエンスといった予期された[予想どおりの]分野だけでなく,哲学,音楽,英語,言語学,人類学といった多様な分野も挙げられる.

2 脳科学がほかの学問(分野)に与える影響を説明する多数の例が,提示できる.ここでは2つの例を挙げる.まず,物事をどのように覚え, 記憶するか〔→学習と記憶のしくみ〕に関する研究は,記憶がおおいに再構成的で創造的であることを,説得力をもって証明した. 記憶違いは,珍しくはないのである.このような研究成果は,目撃証言に対する法律の見方〔←目撃(者)証言を法律がどう見るか〕を根本的に変えた. 目撃者は出来事を忠実に記録し記憶できると長年信じられてきたが〔←目撃者は…と長年抱いてきた信念に反して〕,私たちがある出来事について記憶することは,多くの要因,たとえば過去の経験,偏見,注意力,想像力などに左右されることが今ではよくわかっている.どの事例においても,ひとりひとりの目撃者は,自分が見たと固く信じていることを述べているのだが,それぞれがまったく異なる報告をすることがある.

2つ目の例は,長い間,生理学上の根拠はないと考えられていたプラシーボ効果である.もし砂糖の錠剤が痛みを感じている人に投与され〔→痛みを感じている人に砂糖の錠剤を投与し〕,その人はそのプラシーボ[偽薬]は効くと言われれば,痛みが和らいだと報告する.痛みの緩和は,脳内での特殊な化学物質の放出によって引き起こされることが,今ではわかっている.今日の薬の治験は,似てはいるがおそらく効き目がない薬剤を必ず対照群に投与して行う〔←投与される対照群なしに行われることはない〕.しかし,プラシーボ効果は,このような治験の結果に大きく影響し得るのである.それでは何が効き,何が効かないのかはどのように判断するのだろうか.この疑問は,薬物療法に非常に大きな影響をもたらす.

4 脳科学の影響はどこまで及ぶのだろうか.たとえば,発達途上の脳に関する研究は,子どもをいかに育て,教育するかについて多くのことを教えてくれるだろうか.イエスと言う人もいるが,断固としてノーと答える人もいる.利害関係は大きい―何十億ドルとは言わないまでも何百万ドル[何百万ドル,いやひょっとすると何十億ドル]もかかる公共施策が,神経生物学的に根拠があるとされる考え方と関連があるが,あれやこれやの立場を支持して引き合いに出される神経生物学的な証拠は不十分であったり,議論の余地があったり,強引に解釈されていたりすることが多い.幼い脳は成人の脳より修正可能であるという考え方は―それは確かに正しいものであるが―健康で,幸福で,優秀な子どもを育てるには,最初の3年がきわめて重要だという考え方につながった.この極端な考え方とその根拠となっている証拠は,最近ジョン・ブルワーの著書『最初の3年という神話』の中で批判的に検証されている.ブルワーが明確に論証しているように,脳の発達にとって最初の3年は重要ではあるが,その後の年月も同様に重要である.たった3年後に(発達が)完全に終了するものなど何もない.実際,脳は1820歳まで成長し続けるのである.

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